2・研究室とドジコ

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ワゴンのケーキとコーヒーをドジコが配膳した。 瀬織の前だけケーキが10個並ぶ。 瀬織はケーキを自分の小さめの口にどんどん運びながらドジコに用を言い付ける。 「ドジコ、タネウマのタクの身分証明書と辞令が来てるでしょ?出して。 それと次のミッションのデータを。」 「はいはい!」 テーブルに身分証明書と辞令が書かれた紙、USBメモリーが置かれた。 身分証明書を瀬織が刃平に渡す。 「まあ、ここに来るとき以外はしまっといて。他人に見られると面倒だから。」 辞令は 「技術開発官補佐に右道刃平を任ずる、はい、ドジコ、これシュレッダー。」 刃平に読んできかせたら廃棄にかけてしまった。 刃平が聞いた。 「捨てるモノなのかなあ?」 瀬織は涼しい顔で 「この研究室に常識はないから。所詮、裏稼業だし。」 言い放つ。 ドジコはくすくす笑う。 刃平は凄惨な仕事内容と、ドジコの明るさにギャップを感じた。 瀬織はケーキを食べ終えると、コーヒーをすすりながらドジコに聞いた。 「タクは、どう?」 ドジコは、うーんとうなり 「今はあまり見えませんが、しばらくは何回か死にそうな運命であるのは感じます。 死なれると子種が頂けなくなるので私はこまるんですが。」 刃平はなんとなく話しがわかってきてドキドキしてきた。 「ま、ま、まさか」 瀬織は広い額をペチッと叩いた。 「ありゃ、それはまだ本人の耳に入れない予定だったでしょ。ぼかして話してよね。」 刃平は瀬織に問いただす。 「僕が20歳までに自分で相手をみつけて結婚出来なかったときには姉さんの推薦する相手と結婚させるって約束の『推薦する相手』って、もしや?」 ドジコが 「いやあん!」 と恥ずかしげに顔をそらした。
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