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瀬織は視線を外して宙を見ながら答えた。
「30点ね。ふたつ外れている。」
「え?」
「まず、自分で結婚した場合でも、ドジコは第2婦人になる。
もうひとつ。今すでにドジコと、今日はいないけどナデシコの二人があなたと契ることが決まってる。」
刃平は周りの景色がぐにゃあと曲がったような気がした。
「な、なんか変!大奥つくるのかあ?」
瀬織は刃平の目を見据えた。
「あなたは魂仙手が可能な貴重な遺伝子もってるんだから、色んな優秀な遺伝子の女性にガンガン子供産ませて欲しいわけよ。日本の将来のために。」
「お?え?常識的に、法的にいいの?それ!」
「この研究室に法もヘッタクレもないから。」
そこでドジコがなだめるつもりで
「いいじゃないですかあ。ただの許婚だし~。
アタシはタクさんの第一印象はけっこういいですよー。」
と追い打ちをかけた。
刃平は何か異次元の世界に入った気分だ。ひとつ名案を思いつく。
「姉さん!冷凍精子で人工受精ってのもあるじゃん!」
瀬織は、にべもない。
「却下。自分と同じ『父無し子』にしてどうすんの?」
「いや、異母兄弟がズラリも、子供には、かなりのインパクトではないでしょうか。」
「大体、この組織に入るときの契約書にも書いてある。『右道瀬織の命は公私の別なく従う』ことってね。」
「ぐうう」
刃平は理解した。
種馬と先ほど呼ばれた理由を。
瀬織はUSBメモリーをポケットに入れると立ち上がる。
真っ白になっている刃平の肩を叩く。
「じゃ帰ろ。刃平ちゃん。ドジコ、日曜日空けといて。またね。」
ドジコが
「えーもう帰るんですかあー。寂しいですぅ。」
と駄々をコネた。
「今日の後の仕事は?」
「メガネ女史の提案書の校正が残ってるんで…」
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