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ここまでは普通の住宅だが、クローゼットの奥にもうひとつ扉があった。
刃平は瀬織に尋ねた。
「この扉は…?」
扉は鋼鉄製のかなり頑丈なもので、鍵穴はないが指紋認証と網膜認証の装置がついている。
瀬織はちょっといたずらっぽく笑った。
「うふふふ、ここからがアジトたるところなの。」
瀬織は指と目を装置にあてる。
刃平はその指を見て、あらためてその手の美しさに感嘆した。いわゆる手の関連商品の宣伝のために、手だけを撮影する手タレントという職があるが、それすら比較できないほど整っている。
ガゴンッと重い音がして開錠された。
扉をあけると階段がある。
瀬織に続いて降りると、広い柱のない部屋に出た。
壁際に様々な鍛練器具がある。刃平は唸った。
「うう、これは…」
瀬織は心底楽しそうに叫ぶ。
「そう!武道場よ。ここでみーーーっちりシゴクのよ!楽しみねぇ~ほーっほっほっほ!」
刃平は、小さく
「ああ、やっぱり」
とつぶやいた。
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