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部屋に帰って早々にお風呂の準備をした零が私に声を掛ける。
「いいよ。零が準備したんだから、先に入って」
「疲れてるだろ? 俺は大丈夫だから」
気を利かせてくれたのか――意外とこの男、侮れない。
ルックスも然ることながら、気遣いも初めて会ったときから、ずっと……いや、あれは気遣いなのか?
少しだけ悩んで、零の気遣いを受け入れた。
「じゃ、先に入るね?」
「覗かないから、安心して」
いい笑顔なのだが、何かと一言多い。それが難点。
お風呂を上がり、寝る準備を手早く済ませる。
私の後に浴室に向かった零は、まだお風呂から上がってこない。
その間にトランクの中から、お昼寝用のイ草枕を取り出し、ベットの上へ投げる。
――ベッドの上で抱いて寝るくらいなら、零も大丈夫だよね。
零がお風呂から上がるのを待たずにベットに潜り、投げた枕を抱えると、眠気が一気に襲ってきた。
鼻を擽る”家の匂い”。
まだ居心地の悪いこの場所を、心地の良いものへと変えていく。
そのまま何も考えず、徐々に深くなる気怠さに意識を預けた。
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