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全てが夢であれば良いのに――そう願っても、現実は目の前に有る。
夢のような世界に足を踏み込んでしまったらしい。
「姫ぇー、起きてる?」
遠くで聞き覚えのある、テンションが高めの声がする。
夢と現実が混ざり合った浮遊感。温まった布団が心地よく身体を包み、私を離そうとしない。
「起きないと……」
「何?」
鳴り響くアラームに気付き瞼を開くと、ベッドサイドからは見覚えのある顔が覗いていた。
その顔を見て、昨日の出来事が全て夢でなかったことを改めて痛感する。
「起きた?」
「……うん」
身体を起こし、まだ重い瞼を擦る。
――朝に弱い。窓からは日差しが差し込み、部屋を明るく照らす。
「――やばっ!」
「まだ余裕あるよ。朝ごはん、どうする? 食堂で何か貰ってきておこうか?」
ベットから降り、退屈を持て余しているようにも見える零に目を向けると、既にきっちりと身なりは整っている。
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