-夕焼け色の屋上-

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屋上の右端の手すりにもたれ掛かるように佇んでいるだろう人影は、あたしに気づいたのか、くるりと振り向いた。 夕焼け色に滲んでぼやけたその姿はなんだか幻想的で。 あたしは静かに息をのむ。 細くて華奢な立ち姿。 だけど。 肩幅や顎の形、顔立ちのバランスで、男の人だってわかる。 夕日に包まれたその人は、声もなく涙を流していた。 真っ赤に染まった頬を伝う涙が、透明にきらめいて見えて、あたしは目が離せない。 男の人がこんなふうに泣いているのを見るのは初めて。
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