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「スミマセンでした。すっかりごちそうになってしまって…」 お父さんとお兄ちゃんと三人で大分お酒を飲んでいたはずの渓人、 帰り際の挨拶も…ちゃんとしていて素面みたい。 「いえいえ、またお出かけくださいね。」 返事を返したお母さんもすっかり馴染んだみたい。 「体に気を付けて仕事するのよ。」 いつも帰り際の一言を言われて、ついつい涙がにじむ。 お母さんはいつも帰り際のワタシにそう声をかけてくれる。 助産師になって、人の命にかかわる仕事をしている私の事を、 いつも、心配してるってのは痛いほど感じている。 「川口くんも…過労死しないでね。」 お母さん黒い冗談は良いって… 本当に渓人…超過勤務で笑えないんだから… 「あ…はい。大丈夫です。人生まだやり残したこと多いんで… 死ねません…」 渓人の一言に、少し悲しい気持ちになる。
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