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「これから藤条が来る、恥をかかぬようにな」
あぁ…その事ね
藤条さんってどんな人なんだろう?
今更ながら思った。
まぁどうせ40~50代のオッサンでしょ
期待するだけ無駄よね…
そんなことを考えていた刹那…
部屋のドアがノックされた。
「藤条様がお見えになりました」
ドアの向こうから聞こえた使用人の声にビクリと体が跳ねる
今すぐここから逃げ出せたら良いのに。
まぁ…無理な願い…か。
「おぉ!入れ!!」
お祖父様の明るい声と同時にドアが開く
嫌だ!見たくない…!
「遅れて申し訳ございません、杞憂様」
「待ちわびたぞ、藤条よ!!」
楽しそうなお祖父様の声と嬉しそうな両親の笑い声。
生憎だけど全然私は笑えないわよ!
「杏子、紹介しよう」
お祖父様の声を聞き、ゆっくりと目を開く。
「お前の結婚相手、藤条 海聖だ」
想像と全く違う人。
長身に綺麗な茶髪…
整った顔立ち。
あれ…?
40過ぎのオッサンは!?
「初めまして、杏子様…藤条 海聖でございます」
「え…えぇ、よろしく…藤条」
にこりと藤条が笑う。
でも…何故かこの笑顔に違和感を感じる…
私…この人嫌いだ…
「籍はいれても良いが式をあげるのは杏子が高校を卒業してからだ、まぁせいぜい楽しんで暮らせ」
そう言ってお祖父様が藤条に何かを手渡す。
これ…どこの家の鍵?
「楽しんで暮らせ」
と言う言葉と
えたいの知れない家の鍵…
もう嫌な予感しかしない。
「お…お祖父様?この鍵は…?」
「お前らが暮らす家の鍵だ」
お前らが暮らす…
=同棲…?
この男と?
私が…?
「ちょ、お祖父様…」
「問答無用!さっさと家から出ていけ!!」
こっ…このクソジジィーーーー!!!←
「かっ…お母様…」
「幸せになるのよ、杏子…」
涙を流す母に、そんな母を優しく抱き締める父。
……………………やっぱりこんな家嫌いよ…
家にとどまりたいと言う私の思いも虚しく、私は家から追い出されてしまった。
「うわあぁぁぁん!!これからどうすれば良いのよ!」
泣きながら、家の塀を蹴る。
簡単に言えばただの八つ当たり
…そんな私も数分後には疲れて、その場に座り込んでしまった。
「ううっ…もう終わりだわ」
「…杏子様…」
ポン…と叩かれて後すざりする…
そうだ、こいつが居たんだ…
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