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芙蓉の眉が歪む。怒ったような、泣きそうな…初めて見る顔。
「わかってくれないか。…お前と私では住む世界が違う。私には家族がいる…お前だって、自分の住むべき場所で好い人を見つけて…。お互いの幸せを望むなら、これ以上踏み込んではいけない」
「わからない。わかる必要もない…」
ゆっくりと触れるだけの口付け。芙蓉は逃げるように背を向ける。
白く細い腕を掴み、もう一度後ろから抱き締める。
「やめろ…」
小さく芙蓉が腕の中でたじろぐ。
けれど鼻先をくすぐる甘い香りに、もはや止めることは出来なかった。
袿の合わせからゆっくりと手を差し入れ、温かい膨らみを探る。
「…っ、やめろ…やめてくれ…」
芙蓉の声が弱くなる。
「…嫌だ。芙蓉、お前が欲しい…」
耳許で囁くと、困ったように揺れる瞳と目が合った。
「玻璃月…」
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