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「私も…君たちが居てくれて良かったよ」
お茶を啜り息を吐く。
ここにはたくさんの花が咲く。
芙蓉の好きな花が。
年中いつでも寂しくないように、ずっと咲かせ続けている。
「そうだ」
「玻璃月様?」
「今日は良い月が出そうだから、舞いの用意をしてくれないか?」
「わかりました」
一礼して紫苑が部屋を出ていく。
少しして足音もなく蘇芳が来る。
「主。御召しかえの準備に参りました」
藤色の袿に金糸銀糸の胡蝶の刺繍。
蘇芳がそれを広げると、金木犀の甘い香りが風に混じった。
「…前に舞を舞ったときは金木犀が満開でしたね」
蘇芳の落ち着いた声が耳に心地好い。
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