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――彼女はあの後、文の男の妾になり、一人の男子を産んだ。
そしてそれきり、瞬きをすることも叶わず、静かに息を引き取った。
医者が言うには、以前から病を抱えていたらしい。症状からするにかなりの痛みを伴っていただろうと。
誰も気づいてやれなかった。
けれどそれもまた、彼女らしいやり方だと思う。
潔く、気高い。
「…美しい…。まるで月の化身だな…」
たった一度だけ交わったあの枕上で、彼女はそう言って一粒涙を溢した。
私には芙蓉の方がよっぽど美しく見えていたというのに。
彼女の中で果てた後、艶かしい肢体に唇を這わせ、これ以上ない幸せを味わった。
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