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――彼女を想わない日はない。
けれど不思議と虚しさや後悔はなかった。
彼女に出逢えて良かった。
そんな清々しささえ残してくれた芙蓉。
出逢ってなかったら、今頃どうしていただろう?
そんなことを考えながら舞っていると、屋敷に誰かが入ってくる気配があった。
「…頼爾か…」
芙蓉と同じ空気を持った頼爾に、自然と笑みが漏れる。
芙蓉が残した忘れ形見は、目元が芙蓉に良く似ていた。
「芙蓉に、あげてくれないか」
帰り際、いつものように花を一輪渡した。
紅く、凛とした彼岸花。
――私からの手向けの花。
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