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一瞬、芙蓉の瞳が揺らいだ。
あんなにも勝ち気で気高い彼女の瞳。
その一瞬で充分だった。
「…文の男の物になるつもりか」
「お前には関係のないことだろう」
「言っただろう?芙蓉の幸せが条件だと。その男の妾として生きる道が、お前の幸せになるのか?」
芙蓉は黙った。
このまま彼女が自分を殺して生きるのを見過ごせるわけがなかった。
「…私と」
「それは…無理だ」
芙蓉の声が掠れている。
お互いこんな話をしたいわけではない。
いつまでも睦まじい時間が続くと思いたかった。
悲痛な思いを抱えながら、それでも口を吐いて出るのは互いを傷つける言葉ばかり。
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