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パチパチ……バチッ!……。
俺が留守にしている間に見るも無惨になった故郷。
見渡す限り瓦礫の山と火の海で、さかんだった街の面影もない。
モクモクと立ち上る黒煙。
鼻が曲がるほどの死臭。
まるで地獄のようだ……。
たった一晩でこの有り様だ。
ハッ、と我に返る。
あまりの無惨さに立ち尽くしていた。
俺は急いで家に駆け出した。
死んでいるはずがない。きっと生きている。
そう思うしかなかった……神にもすがるような気持ちで、儚く脆い希望を胸に抱き、ただ走る。
「おかえり」と言う暖かい言葉をかけて貰うために走る。
しかし、現実はあまりにも理不尽で残酷だった。
ドサッ。地に膝をついた。
立っていられなかった。
目にしたのは焼けた瓦礫の下で血を流しぐったりしていた、母と妹の姿だった。
辺りを漂うのは母と妹の死臭。
冷たい何かが頬を伝った。
「あっ…うっ……あぁ、あぁぁぁぁぁ」
咽び泣く。
………
……
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