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涙が渇れた頃にはすっかり夜が明けていた。
何故、イフゼンなんだっ!
ドスッ。
握り締めた拳で大地を強く殴った。
サラナミで耳に挟んだ事がまさか、本当だったなんて………
「オイ、聞いたか?イフゼンが火の海らしいぜ」
一人の男が知り合いであろう男たちに告げた。
「何、言ってんだよ」
「またまた、そんなこと言ってよ」
「俺らを試してんだろ?」
男たちは甲高い声で笑いながら答えた。
その時までは俺もそうだった。
あの時にはもう………
「くっ!」
悔いるばかりでそんな自分が憎くて仕方なかった。
爪が肉に食い込むほど拳を強く握り締め、歯が軋むほど強く絞めた。
そうでもしないとこの感情を抑えることが出来なかった。
もう少し、もう少し早く帰って来ていれば……
まだ、助けられたかもしれない。
死なせずに済んだかもしれない……
そう思うとより一層、拳を強く握り、歯を軋ませた。
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