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「すまぬ。自己紹介が遅れた。
私は第一黙示録を守護していた戰乙女のブリュンヒルデだ。そう言うお前は?」
この娘がブリュンヒルデ。
話にはよく聞く名であったが会ったのは初めてだ。
俺と同じくらいの若さで、朝の陽光を吸収しているかのような黒き髪は、腰まで届き、紫苑色の瞳は凛々しさで輝いている。
甲冑から伸びた腕は年齢相応を思わせる華奢さである。
と見惚れている場合ではない。
顔を左右に揺らし雑念を払った。
ブリュンヒルデが不思議そうに見てたが気にせず告げた。
「俺はマティウスだ」
ブリュンヒルデは俺の名を聞くと、腰に携えていた、一本の剣を鞘ごと抜き、俺に向けて投げた。
「よし、マティウス。私と一緒に来い」
いきなり、何を言っているんだこいつは?
「俺がか?」
「二度も言わせるな。お前以外の誰がいる?」
「死人がいるだろ」
最早、自分で何を口走っているのか、わからなかった。
「くすっ…お前は面白い奴だな、私に死人を連れて行けと?じゃあ、マティウス、お前に渡した剣はなんだ?」
確かに剣を渡されたのは俺だった。
しかし、さっき、会ったばかりの奴にいきなり、剣を渡され、一緒に来いなんて言われて冷静にいられるわけがないだろう。
「返事を聞きたいのだが?」
ブリュンヒルデは顔を覗き込むように聞いてきた。
俺がお前と?
俺は……
俺は行かない…
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