†第一話† ~生きる意味~

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「悪いが、俺は行かない」 思ったことが声に漏れていた。 「理由を聞いていいか?」 ブリュンヒルデは俺に問う。 「………」 理由…か。 言えない。言えるわけがない。 母が死に妹も死んだ。 誰のせいでもない、この俺のせいで。 「答えぬか。ならば選べ。ここで死ぬか、私と来るか」 剣を抜き、俺に突きつけた。 そんなもの、答えは一つだ。 「……殺せ」 「何故、だ?何故、死を選ぶ?」 ブリュンヒルデは思っていた答えと違ったのか、目を見開いて、突きつけていた剣を震わせていた。 「今の俺は命など惜しくない、さぁ、殺せ」 俺はブリュンヒルデに殺めろと告げた。 「何故、そこまで生きることを拒む」 「……お前に………お前なんかに、俺の気持ちがわかるかっ! 俺が留守の間に母も妹も殺された! 俺の“生きる意味”を根こそぎ持っていかれた! 今の世界に生きようが、母も妹も失った俺は、死んでるも同然だ!」 俺はブリュンヒルデに怒鳴っていた。 自分のせいなのに… 他人に当たっていた。 「なら………なら、私はどうしたらいい!? 父も母も兄も目の前で殺され、私を慕っていた部下も守護するべき第一黙示録も守れず、次々に死んでいく民の盾になって逃がすこともできず、逃げていた臆病者な私に生きる価値など……」 ……俺は耐えきれず、言葉を遮り、抱きしめていた。 凛々しかった瞳は涙で濡れ、しなやかだった黒髪は枯れ草のように萎れ、身体中を震わせて嗚咽を漏らしていた。 強がっていなければ、すぐに崩れてしまうほど脆く可憐な娘だった。 ブリュンヒルデは必死に“生きる価値”を探していた。 失った、家族、部下、民。 その場にいたんだ。 この濡れた瞳には今も焼き付いているであろう、残酷な地獄絵図。 たった一人。 俺が生きていてどれだけ支えになったかはわからない。 けど、嬉しかったからトーンが変わったんだ、俺を死なせなくなかったんだ。 生きる意味…… 俺はこんな脆く可憐な娘を見て思った。
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