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「なぁ、ブリュンヒルデ。
俺がお前の“生きる価値”になる。
だから、お前が俺の“生きる意味”になってくれ」
俺はもう、命が惜しくないなどとは言わない。
生きる意味を見つけてしまった。
だから、俺はもう、迷わない。
今度はこの“意味”を失わないために。
「へ?」
ブリュンヒルデは目にまだ、涙を溜めたまま間抜けた声を出した。
俺は立ち上がり、ブリュンヒルデを見据えた。
「行こう」
俺は微笑み、手を差しのべた。
「こ、これじゃ、立場が逆転してるじゃないか!」
ブリュンヒルデは、目尻に溜まった涙を拭いながら告げた。
そして、手を取り
「うん、行こう」
とびっきりの笑顔を見せ、立ち上がった……
あっ!忘れるところだった。
「っと、その前に母と妹を弔ってもいいか?」
「くすっ……最後、格好よかったのに、台無しだな」
ブリュンヒルデは俺の鼻をツンツンして、クスクス笑っていた………。
……母さん、シャロン。俺、行くよ。
「もう、いいのか?」
「あぁ、これ以上いるとまた、行きたくなくなるからな」
「そ、それは、困る」
ブリュンヒルデは真剣な顔で服の袖を掴む。
こいつ……上目遣いは反則だろ……。
「大丈夫だ、生きる意味、見つけちまったから」
目を反らし頬をポリポリ掻く動作で誤魔化す。
「そうか、なら、よかった。それじゃ、行こう」
目を反らしたのはいいが、掴んだ袖は離れなかった……
ビュー。
風が俺らの背を押した。
「きゃっ」
ブリュンヒルデは可愛い声を出した。
そして、少し、風に怒ったように独り言を言い出した。
「なんて、嫌な風だ。ぶつぶつ……」
俺には、母さんとシャロンが後押ししてくれているようだったんだが、ブリュンヒルデは俺の気もしらずにムスッとなっていた。
「ありがとう、母さん、シャロン」
二人に感謝して、空を見た。
「何か言ったか?」
不思議そうに見てくれるブリュンヒルデ。
声に漏れていたか。
「何もねぇよ。それより早く食べ物探そうぜ。腹ペコだ」
「じゃあ、行くよ。早く、早く」
駆け出していく、ブリュンヒルデ。
「ちょっと、待ってくれよ」
そして、俺も走り出した……
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