始まりの刻

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少女は記憶が無くなっていた。 いや全くではない。 火災の時の記憶が全く無くなっていた。 病院の先生が名前意外の事を何度聞いても少女は「わからない」と首を振るだけである。 少女の親戚がお見舞いに来て病院の先生と同じように当時の事を聞いてもやはり「わからない」と首を横に降るだけである。 少女の親戚が聞いても少女はやはり「わからない」の一点張りであった。 ある日いつものように少女の親戚はお見舞いに来て少女の介護をしていた。 今日もやはり親戚が何を話しても少女は返事をしない。 親戚は何も喋らない少女の介護にストレスもあり、それに少女が名前意外何を聞いても喋れるのに返事をしないことに苛立ちを感じていた。 その為ついカッとなり少女の顔に平手打ちをしてしまった。 少女は泣かずに親戚を睨み付けていた。 それに怒りを感じた親戚は病院のベットに横になっている少女の上に股がり何度も平手打ちをしていた。 看護婦達が押さえつけ親戚を無理やり病室から追い出された。 「大丈夫?」 看護婦の優しい声に少女は言葉を出さず『こくん』とうなずくだけであった。 だが少女の顔は赤くなっていた。 この事件の後、少女は心を閉ざし誰とも話なさなくなったのである。
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