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「何?」
「千恵ちゃんもザリガニ取りに行こうよ!まっくろ公園の横の川にな、ザリガニがいっぱいいるんだ!」
遊具が1つもない公園をこの村の子供達は「まっくろ公園」と呼んでいた。
夕方まではまだしも、陽が沈んでしまえば街灯すらない公園は「まっくろ公園」と呼ばれても仕方ない。
「店番があるから無理よ。それに、昨日の雨で川の水が増えてるから川遊びはダメ」
「えー!」
今日の晴天が嘘みたいに昨日はの夕方までは土砂降りの雨だったから川の水が増えているから危ない。
何かあってからでは遅いのだ。
口酸っぱく川には近付かないように注意すると子供達は私に向かって「千恵ちゃんのケチ!」と文句を投げつけて外へ駆けて行った。
普段穏やかな川が増水した様は子供達にとって興味の塊なんだろう。
でも、冗談抜きで本当に増水した川は大人でも危険なのだから子供なんてもっと危険。
私が言っても聞かないかもしれないけど、言わないよりはマシ。
川の水が増水している日は近くを見張る役の人がいるし、子供達が行ったとしてもキツく言って帰らせるだろう。
「……」
子供達が開けっ放しにして行った引き戸の外は晴天。
いつもは殺風景で地味な村がどんどん色付き始めているのは6月20日に向けて。
赤と青を中心に色付けられる村はまるで別世界のよう。
この装飾を不具合なく美しく、丁寧に飾り付けて丙神子祭を迎える。
丙神子3へ…
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