丙神子2

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「千恵ちゃん、これください!」 「俺も俺も!」 日曜と言う事で今日は小さなお客さんが多い。 村唯一の駄菓子屋と言う事で平日ですら学校終わりの夕方にもなると少ないお小遣いを持って必死に駄菓子を選ぶ小さな子供が殆ど。 でもそれは夕方に纏まって一気に押し掛けるだけで一時的。休日はそれが1日を通して満遍なく来るから店番も空ける事が出来ない。 休日の店番の際は朝10時の開店から閉店の18時までほぼ店の中で過ごす。 駄菓子屋だからと言って来るのは小さな子供だけじゃなくて、村の殆どが高齢者だけあって高齢のお客さんもいる。 高齢のお客さんは大体が話をする事が目当て。 平日は私が学校から帰って来るまではお母さんが店番を担当しているから、話の相手はお母さんがしている。 小さな子供のお客さんが必死に選んだ駄菓子を受け取り、普通なら計算をするものだけど私は計算はせずに駄菓子を白いビニール袋に入れ、お金と引き換えに駄菓子の入った袋をそれぞれ手渡した。 常連で小学校低学年のお客さん達。 少ないお小遣いで買えるだけの分を必死になって選んでるんだから、そんなズルい真似なんてしないと信じている。 子供達は駄菓子を受け取ると決まって店内にある備え付けの古い机に集まり、買った駄菓子を食べる。 雨の日ならまだしも、外は梅雨時期だなんて思えない程の晴天なんだから外で遊びながら食べればいいのに…と思うけど、これも遊びのコースの1つなんだろう。 外で少し遊んで、それから少ないお小遣いを握り締めて駄菓子屋で駄菓子を買ってその場で喋りながら食べる。そしてまた外で時間が許す限り遊ぶ。 大体こんな感じ。 私も昔はそうだったから分かるもので、何よりこの村に子供が遊べるようなものがあまりないのが原因。 公園はあるものの遊具なんて一切なく、軽く剪定された背の低い木や飛び抜けて大きな桜の木と銀杏や紅葉の木。 かろうじて石で囲った小さな砂場がある位だけど、その砂場の砂は固く砂利も多いせいで遊ぶ子なんて殆どいない。 小さくて貧乏な村だけれども、お金を出せる所にはちゃんと出さないといけないと思う。 .
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