第3章

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「妹に本を買ってくるよう頼まれたのだ。隣の何とか君とかいうやつ」 「妹ちゃんいたんだ? ちょっと待ってね」 俺がそういうとワナビは少し考えて、近くの棚から一冊の本を取り出した。 「これなんてどうかな? おすすめだよー」 すでに指定されて頼まれているのにおすすめを渡されても困る。 「だいたいこれは絵本ではないか! なんだこの怪物みたいな少年は」 題名からして増田君というらしいが、平凡な名に似つかわしくない容貌をしておる。 「これは女の子の視点から描かれていてね、ってあれ。妹さんって言うから絵本だと思ったんだけど……違った?」 顔を赤くして上目使いで見てくるワナビ。 店員として失敗が恥ずかしいのだろう。 「違うもなにも俺の妹はお前より大人びているぞ」 外見だけはな。 「うぅ、もっと早くいってよぉ。そもそもなんでちゃんと聞いてこないのさー!」 放課後のようにポカポカと俺を殴るワナビ。  店員が客に暴力を振るっているそ。 なに、のん気に微笑んでるんだレジの店長っぽいやつ。 おいこら、どいつもこいつも仕事しろ仕事。 この前までニートだった俺の言えた義理ではないが。
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