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室外の風は少しだけ肌寒く、少し長い僕の前髪を揺らす。
君と僕の距離は1メートル。
その潤んだ二つの瞳は僕に何かを訴えるように見つめる。
足は縛られ、
もう地を駆け回れはしない。
羽は折られ、
もうあの大空を恋い焦がれることも叶わない。
世界は反転して、吊るされる君は何を思うのだろう。
生まれ、今まで。
その両目で見てきた世界はいったい何色だったのだろうか。
そしてその目で僕に何を語っているのか。
君がいくら泣き叫ぼうが、
君がいくらきれいな声で鳴こうが。
君の声は僕にはわからない。
それは罵られた言葉なのだろうか?
助けを求める言葉なのだろうか?
今から君の命を奪う僕への恨みだろう。
「ごめんな」
小さく呟いた言葉には偽りはない。
コケッ
小さく返ってきた声は君のものだろう。
僕は君の首を軽くもってその瞳を指先で閉ざした。
俺の手に伝わったのは暖かい熱。
生きている熱。
君の見ている色はどんな色ですか?
真っ暗な黒か。
絶望の黒か。
太陽に透けた僕の血管か。
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