異端者の中の異端者

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 しかし、それも束の間だった。すぐに前かがみになり、パンフレットを貪るように読む。 「高等教育を受けながら、専門技能の取得もできる学校か…………えっと、場所は……聞いたことないな」  すぐにスマートフォンで検索をかける。 「驚く程の田舎だな……ほとんど周りに何もないじゃないか。しかも遠いし、通えねぇよ」  ついでに、学校自体の検索もする。どうやら公式のホームページがあるようだった。 「全寮制か。学校内にスーパー、コンビニ……デパートまであるのか!?レンタルビデオショップまで……」  スケールの大きさに、思わず嘆息する。 「これだけ大掛かりだと、入学金や授業料が高いんだろうな……。多分、ハンパねぇはず」  パンフレットの目次から金銭関連の項目を見つけ出すと、目標のページへ一気にとんだ。あまり期待せずに、読み進める。 「は!?全額免除!?……な、なんで……」  文字を追うスピードが早くなる。  各界からの注目を集め、世界的に援助金が集まって創設。よって初期費用ゼロ。各店はそれぞれが企業として扱われ、運営費は国からの補助金に加え各国政府からの支援金でまかなわれている。故に、世界から人材が集まり、結果としてグローバリズムに富んだ学園と…………  そこまで読むと、俺は長い溜め息を吐いた。  こんな所に俺が受かるわけがない。何故、俺にパンフレットを送ってきたかは知らないが、何かを期待してたなら、それは見込み違いだ。 「なんせ俺は、普通の学校にも受からなかった、ボンクラだからな」  自嘲気味に、そう呟いた。  ふと、妹のことを思い出す。わざとらしい笑顔、努めて出す明るい声。そういえば、母さんもそんな感じだったか……。  しばらく逡巡してから、今度は、先ほどとは違う感情を帯びた短い溜め息を吐いた。   「受けるだけ、受けてみますか」  ペンを握り、同封されていた受験申込用紙の氏名欄に「新庄 志人(しんじょう ゆきと)」と書き込む。  そして、その他諸々の記入欄を埋めると、郵便局で書留速達を申請した。
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