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「今ぐらい、好きなことしたっていいんじゃない?」 HRも終わった放課後。 一人のクラスメイトに言われた。 「…西山君?」 私、倉本七生に声をかけてきたのは、中学一年からずっと同じクラスの西山悠一。 中学から一緒といってもほとんど話したことはなくて、高校に入ってからなんて目が合うことすらなかった。 だから彼が何を言っているのかさっぱりだった。 「倉本さん。やりたいこと あるでしょ? 俺、知ってるよ。」 座っている七生の顔を覗き込むようにして続ける悠一。 やりたいことという言葉。 少し、思い当たることがあって不安で一杯になる。 「あの…何?」 勇気を振り絞ってたずねる。 不安はイヤな予感から。 イヤな予感というのは大抵当たるものだから本当に困ったものだ。 「隠してるみたいだからここでは言わない方がいいよね? 今日、一緒に帰ろうよ。」 「…。」 無言は肯定の意。 さして親しくもない二人が一緒に帰ることになった。
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