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二人は無言のまま歩みを進める。 もう帰路の半分を過ぎた頃。 先に口火を切ったのは悠一だった。 「そこの公園、よろうよ。」 「…。」 七生は黙ってついてった。 やはり二人の間には沈黙。 しばらくした後、口火を切ったのはやはり悠一。 「俺さ、本…好きなんだよね。」 立ち尽くしていた七生をベンチに座らせ、一人話し始める。 「読むのも、書くのも好き。 …でも一番好きなのは直すこと。」 「直すこと?」 初めて七生が口を開く。 「そう。編集なんて呼べるほど大層なことじゃない。 だから“直す”こと。俺の父親、作家の編集なんだ。 小さい頃よく仕事場につれってもらってさ、投稿されたけどダメだったヤツ、よく直させてもらってた。」 “投稿” よく文庫本の後ろに載ってる自作投稿のことだろう。 七生も何度か投稿したことがあった。 「そう…なんだ。」 少し形は違ったが、イヤな予感が当たってくる。 「俺、その中で一番好きなのが“白い岩”って著者。」
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