scene010

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後ろが壁なので少しだけ灰の方に寄った。 「ボクは自分で決めて成瀬先生に着いて行きました。大変なことなんて無いです」 驚いたのは五十嵐先生だけでなく、隣りの灰もらしい。視線が四方八方から突き刺さる。 「…ほう、中々いい顔で睨んでくれるじゃないか」 見下すような笑みは苦手で、更に動きを制御されるような感覚に陥る。 「それに、予想以上に懐いたようだな。あぁ、前からだったか?このピアスも」 五十嵐先生の手が伸びたのは灰の耳で、それを見たら思わず身体が動き、灰が教長にしたように、ボクは五十嵐先生の手を思いっ切り払い落としてしまった。 ざわついたのは生徒達。 「本当に予想以上だ」 嫌な笑いはボクを取り巻く。 「帰んぞ」 灰はボクの手を取り早足で歩き出した。生徒たちに睨みを利かせて道を開けさせる。一瞬で出来た道をなんの抵抗も感じず堂々と歩く灰に少し感心していた。 一つの鋭い視線には気付かない振りをしながら灰について行くことしか今のボクには出来なかった。
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