裏と表

2/13
前へ
/142ページ
次へ
カーテンの隙間から射した日光がベッドで横たわる女性、デボラ・Bの目蓋越しに眼球を刺激する。光に反応して意識が覚醒し、続いて鼓膜が騒音を拾う。 『…』 まだ眠気が残るも、ほぼ起きて活動できるレベルになってしまい、デボラは二度寝を諦め、もぞもぞとベッドから出る。 白のTシャツにジャージと短パン。ダメ人間全開のだらしねぇ格好のまま洗面台を目指す。 しかし先客が居た。 『おう、起きたか』 洗面台を占拠していたのはダグラス・B。デボラの父に当たるその男は、洗面台でパンツ一丁で体重計に載っていた。風呂上がりらしい。 『おはろ~』 『もう昼だぞ?』 『今日は非番だからいーの』 そう言って洗面台から自分の歯ブラシと歯磨き粉を取り、ほぼ素っ裸の父親の隣で歯を磨き始める。 と、視界の端をド派手な何かが横切り、歯ブラシをくわえたままソレに声を掛ける。 『ミィ、おでかけ?』 ミィと呼ばれた女性、ミイネ・Bが振り返り軽く会釈しながら答える。なんのイベントか、やけに裾の短いお洒落な着物を着ていた。 『非番だからデートです』 デート、という単語に一瞬違和感を覚える。が、すぐに把握し、冷たい視線を送るデボラ。ミイネは自他共に認めるガチ百合さんである。 『…お帰りは何時かな?』 『さぁ?少なくとも、今日は帰してはくれないのではないかと』 『…デートプランは?』 『とりあえず、《気増電波塔》を建ててきます』 『…出撃どーぞ』 『いってきまーす』 ルンルン気分のミイネを軽蔑の眼差しで送り出すデボラ。一体いつからあんなふうになったのだろうか? 『なんだ?アイツは建設関係の副業でもやってるのか?』 『さぁ?』 話の内容を理解していないダグラスが不思議がり、それをデボラは知らん振りで誤魔化す。 『ただ、いつまで経っても《気増タワー(キマシタワー)》なんて物が世に公開されることはないだろうね』 『?』 『ところでオトン、私は風呂に入って汗を流したいんだけど?』 『ん?入ればいいだろうが?』 『いやいや、素っ裸になるから出てけって言ってるの』
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加