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カーテンの隙間から射した日光がベッドで横たわる女性、デボラ・Bの目蓋越しに眼球を刺激する。光に反応して意識が覚醒し、続いて鼓膜が騒音を拾う。
『…』
まだ眠気が残るも、ほぼ起きて活動できるレベルになってしまい、デボラは二度寝を諦め、もぞもぞとベッドから出る。
白のTシャツにジャージと短パン。ダメ人間全開のだらしねぇ格好のまま洗面台を目指す。
しかし先客が居た。
『おう、起きたか』
洗面台を占拠していたのはダグラス・B。デボラの父に当たるその男は、洗面台でパンツ一丁で体重計に載っていた。風呂上がりらしい。
『おはろ~』
『もう昼だぞ?』
『今日は非番だからいーの』
そう言って洗面台から自分の歯ブラシと歯磨き粉を取り、ほぼ素っ裸の父親の隣で歯を磨き始める。
と、視界の端をド派手な何かが横切り、歯ブラシをくわえたままソレに声を掛ける。
『ミィ、おでかけ?』
ミィと呼ばれた女性、ミイネ・Bが振り返り軽く会釈しながら答える。なんのイベントか、やけに裾の短いお洒落な着物を着ていた。
『非番だからデートです』
デート、という単語に一瞬違和感を覚える。が、すぐに把握し、冷たい視線を送るデボラ。ミイネは自他共に認めるガチ百合さんである。
『…お帰りは何時かな?』
『さぁ?少なくとも、今日は帰してはくれないのではないかと』
『…デートプランは?』
『とりあえず、《気増電波塔》を建ててきます』
『…出撃どーぞ』
『いってきまーす』
ルンルン気分のミイネを軽蔑の眼差しで送り出すデボラ。一体いつからあんなふうになったのだろうか?
『なんだ?アイツは建設関係の副業でもやってるのか?』
『さぁ?』
話の内容を理解していないダグラスが不思議がり、それをデボラは知らん振りで誤魔化す。
『ただ、いつまで経っても《気増タワー(キマシタワー)》なんて物が世に公開されることはないだろうね』
『?』
『ところでオトン、私は風呂に入って汗を流したいんだけど?』
『ん?入ればいいだろうが?』
『いやいや、素っ裸になるから出てけって言ってるの』
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