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午前七時、ケータイのアラーム音で俺は目を覚ました。
手探りでケータイを掴み、アラーム音を止める。そして上半身だけを起こす。
「…あとちょっとだったのにな…」
寝癖でボサボサになった髪をかきむしりながら独り言を呟く。
俺、久多良木 良太(クタラキ リョウタ)は今年の四月に入学と同時に両親に土下座をかまして一人暮らしを始めた高校生だ。
締め切っているカーテンの隙間からは雀の鳴き声と、朝の温い日差しが入り込み、薄暗い部屋を照らしている。どうやら昨日まで降っていた雨はとっくに止んでいるらしい。
そんな感じでボーッと辺りを見回して数分、いい加減起きなきゃな。と、思いベッドから立ち上がる。あくびと共に全身を伸ばし、部屋の電気を点ける。
「…あれ?どんな夢だったっけ?」
ふと、今日見た夢を思い出そうとしたが、つい先程まで覚えていた夢を惜しかったという感覚以外を残して忘れてしまっていた。
「まぁ…よくあることか…」
独り暮らしを始めてから独り言が増えた事も含め、俺は軽い羞恥心を感じた。小学生の頃や邪気眼ならまだしも、高校生にもなってこんな夢を見るだけは愚か「…あとちょっとだったのに…」なんて事を思ってしまう自分が恥ずかしくなってきた。
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