プロローグ

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30分後私はとうとう大木へとたどりついた。見るからに立派な大木。子供が10人手をつないで円を作ったとしてもまだ収まりきれないほど大きな幹。それがまっすぐにまっすぐに天へと伸びている。 まるでこの世界のものとは思えないような迫力がこの木にはあった。木々が雑踏と生い茂るこの森がだが、この大木の周りには木がなく太陽の日が明るくさしている。大きな枝には小鳥たちが巣をつくり歌を歌っている。小動物が日向で昼寝をしている。 薄暗い森だがここだけは別世界に感じた。 純粋に感動して、しばらくこの風景を目に焼き付けていた。この風景をみて死ねるのなら悪くない。純粋にそう思えた。 そんなとき、不意に嫌な気がした。小鳥たちはいっせいに飛び立ち、小動物たちはいっせいに薄暗い森に逃げていく。 なにか良くないものがくる。 ビキビキ。大木の横の空間にひびが入る。ひびはどんどん大きくなっていく。3mを越すようなおおきなひびになったとき中から腕が出てきた。大木のような大きな茶色の左手。次に左足、動体、頭、右手、右足……。 ゾクり……。  背中を冷や汗が流れる。 3mを越す大きな体。丸太のような大きな手足。私くらいならひと呑みできそうな大きな口。頭の角。右手にはおおきな棍棒。
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