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この抗争の中を掻い潜って逃走している最中に
いろんなモノが目に入った
足元を埋め尽くす家屋の残骸、黒煙の臭い、血の臭い、悲鳴、人の骸。
そこで、ふと
昔、ある男が言っていたことを思い出した
──────いずれ犠牲の上に造られたこの国は崩壊する
今も、そして、これからもこうして生まれいずる憎悪の火種は、やがて業火の如く、全てを焼き尽くす
誰にも止められない
人は淵に立たねば気付くことができない
大切なモノは何なのか
日常がいつまでも自分の傍にあると信じて疑わないこと
それはいつ失うか分からないこと
奪う者は常に存在すること
簡単なのだ、呆気なく、全てを一瞬で失ってしまうこともある
そしていつか後悔する。自らの過ちを。それが人だ──────
ぎゅっと袖を掴まれた
振り向くと
自分と同じで幼い
自分の唯一の友達の少女が不安そうな目でこちら見ている
泣き叫ぶ声
狂ったような笑い
入り交じった隔離区域は
俺が見てきた中でも最も滑稽だ
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