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ゆらゆらゆさゆさ。私は緩やかな揺れによってゆっくりと意識を取り戻しました。私の体には布がかかっていて、誰かにお姫様抱っこをされている状態です。私を運んでいる人がどんな人なのかを確認すべく、運んでいる人の顔があるであろう上を見上げると、白髪の様な銀髪ロングヘアーで塔の様な帽子を頭に乗っけている女性と目が合いました。
「おっ、起きたか」
銀髪の女性に声をかけられて、私は今までの事を思い出しました。それはフラッシュバックの様で、あの時の映像が一気に再生される感じです。忘れかけていたあの出来事を思い出して右腕を軽く動かしてみたところ、私にかかった布が少し盛り上がるだけでした。あぁ、やっぱし私の利き腕は……。
「私は上白沢慧音というものだ。昨日の晩、お前が人里の近くで倒れているのを見つけてな」
また食われるのか。そう思ってしまった私は、足をバタつかせて抵抗しようとしたのですが、慧音さんはそんな私に釘を刺した。物理的な意味ではなく言葉で。
「まてまて、私はお前をこれから病院的な場所に連れて行こうとしてるだけだ」
「……嘘です」
「お前の腕の出血を止めたのも私だ。おかげで薬が全部空になってしまったよ」
腕に痛みは無いので、慧音さんの言っている事は本当のことなのでしょう。
「…………」
「別に取って食おうなんて思ってないよ」
すっかり対人恐怖症になりつつある私は、やっとこさ慧音さんの最後の言葉を聞いて落ち着いたのでした。ですが抵抗は止めても内心ビクビクしてます。心は落ち着いていません。まぁあの子とは違って話が通じる相手ですし、ここは慧音さんを信じてみることにしました。
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