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俺の言葉にハッと天使が顔をあげて、真っ直ぐに見つめる目が疑惑と期待を秘めて訴える。
「────帰れるの?」
「帰れるよ」
安心できるように同じ目線までしゃがんで、何となく舌で涙をすくえば、心底驚いた顔をしながらもくすぐったそうに身を捩って、子供だから容易く警戒心がとけたのか幾分明るい声で「本当に?」と身を乗り出す。
「本当に帰れるの?」
「うん。俺が帰してあげる」
小さな手をとって立つと天使も素直に立ち上がる。まだ不安気にしてるけど、問題ないだろう。
この天使がそれを望むなら、この子の生きる場所へ落とし物を届けに行こうか。
俺たちの大嫌いな、
この子が笑っていられるあの世界へ。
気まぐれに差し出した手を、天使は笑って握り返した。
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