8人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
*天使*
レンガを連ねたロードに穏やかな色合いの家や店が街を形作る。ここ『異世界』は、人間たちが暮らす街の風景に似た世界だけど、実際に人間は暮らしていない。簡単に言えば人間界をモチーフにした世界。ここで生きてる者は人間の姿をしてるけど中身は蛇や蝙蝠、金魚や猫なんかが本来の姿を隠して生きている。
例えば蛇が人の姿をしていたとすると、その人は瞳孔がやたら縦に細かったり、音に敏感だったりするんだ。
はじめまして。
アイヴィスです。
天使として生まれた僕は、今は街の少し外れにある孤児院でお世話になっている。両親のことは全然わからない。どうやら幼いときに両親を探して迷子になって、何があったのか記憶が曖昧になってしまったらしい。孤児院の先生も詳しいことはわからないと。だけど孤児院には僕以外にも子供たちがいるし良い子達ばかりだから皆仲良くやってるよ。
今日は少し冷たい風が吹いて、けれど太陽の光は雲に遮られることなく街を照らしてるからとても気持ちが良い。
だからだと思う。そんな気分が良くなるばかりの風景だったから今日に限って皆には秘密の、お気に入りの隠れ場所に行こうと思ったのは。
最初のコメントを投稿しよう!