―其ノ参―

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「説明になってねーよ」  大山拳変身作戦の担当箇所説明は、大介のツッコミで締められた。とにかく、容姿に関しては今更もう変えようもない。噂の美少女・角折希々は、もうすぐこの場に現れることであろう。  緊張した面持ちで少女の到着を待つ拳は、嬉しいやら恥ずかしいやらで死にそうな顔をしている。出会う前からこの調子では先が思いやられると、見守る一同は早くも怪しくなってきた雲行きに不安を感じていた。  そして、待望の美少女が現れる。 「あっ、飛火夏虫さーん!」  元気に拳の元へ駆け寄ってきたのは、昨日と同じツインテールを揺らす角折希々。その可愛らしい私服姿を前に、拳は早くも限界を向かえそうであった。 「ごめんなさい。待ちました?」 「あ、うん。十五分くらい」  真面目な返答に、大介達はずっこける。 「大山っちのアホ! そこはオーソドックスに『俺も今来たところ』でいいんだよ!」 「いやぁ、しかし本当に美少女じゃないか。正直羨ましいね。羨ましいよ。羨ましい限りだ」 「村雲に言いつけるぞ」 「ごめんなさい」  速人に脅されシャギーが謝ったところで、二人の動きに進展があった。 「あの、こ、コレどうぞ!」  拳が薔薇の花束を希々に差し出す。華やかなプレゼントを前に、少女はにっこりと微笑み口を開いた。 「いらない」  断られた。 「よく考えてみてよ飛火夏虫さん。希々達はこれからご飯食べたりしに行くんですよ? その間ずっと花束持って移動しなきゃいけなくなるじゃないですか」  正論であった。車で移動するわけでもないのに花束など持たされても、確かに邪魔なだけである。どうやら、希々は言いたいことは言うタイプのようだ。  拳は光の速さで花束をゴミ箱に突っ込み希々の元へと戻る。すると、希々が笑顔で尋ねた。 「さて、何処に行きましょうか? 希々からお礼をすると言っておいて何なんですが、特別行くところとかは決めてないんですよね。飛火夏虫さんは行きたいところあります?」
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