かわいいあなたへ

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 「亜希ちゃんなら付き合ってもいいかな」  それは昨日のことだった。最初はただの冗談かと思っていた。   駿さんとは3ヶ月前、知り合った。私が近所の公園で散歩をしていると、「この公園、きれいだし居心地もいいよね」と話しかけてきたのだ。そこから話も弾み、家も近所だったということが判明して、最近は学校の帰りに駿さんの家に通い詰めている。 勉強を教えてもらったり、漫画を読んだり、先週の休日にはお昼ご飯を作ってもらった。素朴なチャーハンだったけど、おいしかった。 「チャーハンは得意なんだよね」と言っていたので多分よく自炊をするのだろう。 駿さんは絵がうまい。 デッサンだけど、鉛筆一つで濃さを表現している。私がうまいね、というと決まっていつも 「まだまだだよ、こんなのゴミだ」と、笑って言う。 一番驚いたのは、いわゆる「黒歴史」とやらを聞いた時だった。 「この話は亜希ちゃんには言えないなあ」というので、時間をかけでも問いただしてやろうと毎日のように「黒歴史ってなんなの?」と言った。 そしてある日、 「・・・実はね、去年の秋だったかな部活の後輩達4人に一度に告白されたんだ」 「へえー」なによ。もしかして自慢? 「・・・やっぱやだ」 「いいじゃん、言ってよ」 「んー・・・」目が泳いでいる、そんなにやましいことでもしたのだろうか。 「あの・・・告白されたときに、断れなくって、でも一人だけ選ぶっていうのも嫌で・・・」 「うん」 「4人一度に・・・付き合っちゃいました・・・・・・」 「ふーん・・・」 別に、驚かなかったわけではない。ただ・・・なんか・・・。 「うわああ!やっぱり引いたよね!?」 「そんなことないよー」 そんなことない、そんなことないんだ。だけど、私のこの感情は・・・なんだろう。 「別に、浮気者って訳じゃないんだよ!?・・・たぶん」 駿さんはすごく焦っているようだ。顔も赤くなっている。ちょっといじってみようと思った。 「えー、実は だらしない男 だったりするのかな?」 「なっ・・・・・・・!!そんなことないってば!」 顔が真っ赤。かわいい。 思えば、いじってみようと思ったのは、やきもちをやいてしまったからかもしれない。 だから最後に八つ当たりをしたのかもしれない。 「ばーか」 私はちっちゃく呟いた。
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