愛をこめて殴る 

4/4
前へ
/9ページ
次へ
それからほぼ毎日、公園で僕たちは喋るようになった。 だけど、彼女はあまり自分のことを喋らない。 僕が話してることにただただ、相槌を打ち笑っていることが多い。 「今度の休みの日、僕の家に来ない?」 色々彼女のことを知りたかったから、誘ってみた。 亜希ちゃんはまってました!とでもいうように満面の笑みでOKサインを出した。 そして次の日の日曜、亜希ちゃんが僕の家に来た。 よく考えれば、僕の家になにか亜希ちゃんが喜ぶものはあっただろうか。 「ごめん、僕の家何もないよね」 といいつつ何かないかと探す。 すると僕の勉強机の上でなにかを見つけたようだ。 女子中学生が興味の沸くものなどあっただろうか。 「これ、駿さんが描いたんですか?」 彼女の目線の先には僕が描いた絵があった。 片づけていなかったことにきづいた。 焦りながらバタバタと片づけると、なんで片づけたんですか?と片づけたところへ 向かっていく。 「やっ・・・だって恥ずかしいじゃない。そんな他人に見せられる絵じゃないし・・・その、まだまだゴミだし・・・」 もごもご言っていると亜希ちゃんは容赦なく、勉強机の引き出しを開けた。 そしてまじまじと僕の絵を見つめる。 「すごいですね、鉛筆一本でここまで細かく濃淡を表現できるなんて」 そして亜希ちゃんは微笑んだ。 僕はその微笑んだ亜希ちゃんを描いてみたい、と思った。思っただけだけど。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加