8人が本棚に入れています
本棚に追加
江 戸の街はいつもと変わらなかった。
土 方は、やはりコイツ一人で行かせても良かったのでは、と考えながら歩いている。
「あれ、旦那じゃねぇですか?」
隣を歩く沖 田が指をさしたのは、近くにあった甘味所。
土 方はそちらを見ることなく歩く。
「土 方さん?」
「何だ」
「行かねぇんで?」
「どこに」
「旦 那の所でさァ。いつもなら絡みに行くのに」
「今日はそういう気分じゃねぇ。とっとと行くぞ」
「……へい」
土 方の足が速くなったと感じた沖 田の顔が、少し歪む。
「土 方さん」
「あ?」
「ちょっと、こっち向いて下せェ」
どうしたのかと土 方が振り向く。
その瞬間、沖 田の唇が土 方のそれに重なった。
甘い、匂いがする。
そう感じた土 方の脳裏に、昨夜の出来事が蘇ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!