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「あれ、多 串くん?」
「……土 方だ」
居酒屋にふらりと現れたのは、見慣れた銀 髪だった。
当たり前のように隣に座り、酒を頼む彼。今日は良いことがあったのか、いつもよりにこにこ笑っている。
……だいぶ酔いが回ってるみてぇだ。 頭がふわふわしてきた。
久々に、浴びるように酒を呑んでいた土 方は、銀 時を見ながらそう思った。
けれど、ゆっくりできる休みも今日くらいだ。この前の接待は、大分イライラした。
……今日くらい、潰れるほど飲んだって、罰は当たらねぇだろう。
猪口を唇に当てる。酒を口に含み、嚥下すると、視線を感じた。
ちらりと横を見れば、隣に座っている銀 髪が優しい目で自分を見ていて、土 方はひどく驚いた。
今までコイツに、こんなに優しい顔を向けられたことがなかった。いつもいつも、会う度にケンカばかりで。
だから、その好意のある微笑みに、妙に緊張して、くすぐったくて、すぐに目を逸らした。
「……嫌なことでもあったか?」
「別に……、いつもとかわらねぇ」
「ふーん? の割には、今日は随分飲んでんな。顔、真っ赤だぞ」
頬がヒヤリとした。
何かと隣を見ると、銀 時の手が自分の右頬を触っている。
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