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次意識が覚醒したのは、夜が明けてからだった。
見慣れない部屋に目を見開く。起きあがろうとしたが、なぜかそれは出来なかった。
「……ッ」
自分の体を、誰かが抱きしめている。
後ろから抱きしめられているため、人物の断定はできない。できないが、推測は出来た。
この甘ったるい匂いは、万 事 屋だ。
焦る自分を頭で制御しようとするが、如何せん頭まで混乱している。どうしていいか分からない。
だって自分は裸なんだ。しかも今はベッドの上。
シーツが乱れているのは、寝ていたって容易に確認できるほどだ。
服はあちこちに散らばっていて、雄の臭いすらする。
「…………有り得ねぇだろ……」
呟いてはみるが、この状況はもう事が起きたことを表していた。
なんで俺が。ましてや男同士で。もしかして俺が襲ったのか? 俺が、コイツを?
「いやいやナイナイナイ……」
考えれば考える程思考がぐちゃぐちゃになっていく。
とりあえず逃げなくては。
そう考え、土 方は身を捩る。
できるだけ静かに。起こさないように。
しかし、少しして銀 時が身じろいだ。
「……っ!?」
銀 時と離れた距離がぐんと縮まる。
随分強い力で、また抱き締められた。
土 方の心臓はどんどん早く鼓動を打つ。銀 時が起きたのでは、ということで頭がいっぱいになっていた。
「……ん…、ひじかた…」
「!!」
突然耳元で聞こえた声に体を震わせた。それと同時に、記憶が取り戻されてゆく。
「……嘘だ…、有り得ねぇ、有り得ねぇだろ…」
全てを、思い出した。
抱かれたんだ、俺は。
この大嫌いな銀 髪に。
抱かれて、しまった。
「愛してる」なんて言われながら。
優しく、熱く、甘く、抱かれたんだ。
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