ポーカーフェイス

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   誰もいない厨房で、秋人は息をついた。  ワイシャツを飾っていた白のネクタイを緩めながら、片付ける為運んで来た残り少ないボトルの中身をグラスに注ぐ。  琥珀の液体を勢いよく飲み干して、秋人はもう一度肩で息をした。  顔が映し出せそうな程綺麗に磨かれたステンレスのテーブルの上に、空になったグラスを勢いをつけて落とすように置くと、コーン……といい音がよく響く。  とりあえず、疲れた。  店の顔であるキャストの女性達に顎で使われることには慣れているが、仕事とはいえ、今日はそれらに関わること全てが億劫だった。  理由は何となく判っている。  気になって仕方なくて、母校である高校まで様子を見に行った少女のことがあったからだ。 .
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