もう一度この手を握る為に

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父と母は嘆いたが、弟のリックは酷く冷静だった。 魔女狩りをしている者達がジャクを火刑にする為にエリックから離そうとした。 しかし、斧を使ってもジャクの身体を傷付けることは出来なかった。 エリックの父は彼等に言った。 「もう…もういいです…一緒に焼いて下さい…」 彼等は躊躇ったが、他に方法がなかったので二人の遺体を共に焼くことにした。 呪術師でも解けなかった術。 仕方がなかったが、エリックの悲願は叶えられた形となった。 リックはエリックが居なくなった分を補うように働き、若くして亡くなった。 やがて時代は終わり… 現世。 永人(エイト)は弟・懍人(リント)が“虫”と呼ばれる魔物に侵された事をきっかけにHeretical Crossに関わるようになった。 13歳の彼のもとへ… 不死の人間・セト。 今の名は空海。 空海が永人に約束通りあのオルゴールを渡しに来た。 「私は前世の君にこれを来世の君へ渡すよう、頼まれた。開けるか開けないかは君次第だ」 家族の前でオルゴールを受け取る永人。 「開けなければ…きっと僕は後悔する…と思う」 永人はオルゴールを開けた。 美しい旋律と共に記憶とあの時の自分が中へ入って来た。 「はぁ…はぁはぁっ…」 蘇る記憶と感情に息を荒げると両親が心配して声をかけてくれる。 息を整えた後… 俺は確認をした。 「セ…空海さん。ジャクは今、いますか…」 空海、いや…セトは微笑み… 「生きているよ。今の名を空前 邪駆という」 現在。 俺は両性であった邪駆と結婚した。 傍らでうたた寝する邪駆の身体には新しい命が宿っている。 俺はあの時…オルゴールを開けて良かったと思っている。 いや…開けていなけばこんなに幸せな事はなかっただろう。 そっと、邪駆の手を握る。 もう一度この手を握る為に… 俺は転生したのだから。 End
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