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あたしは見知らぬ場所に立ったいた。
どこかは、分からない。
桜の花弁が、ひらりと舞う。
見上げると大きな桜の木が、私を見下ろしていた。
散っていく花弁が美しい。
「散り際が永遠なら、桜の美しさは永遠になる」
ふと、自分の口からそんな言葉が漏れていた。
何故、こんなこと自分は呟いたのだろう…
だが、聞いたことがある気がした。
「ばーか。永遠なんてねえよ」
記憶のそこから響いてくる、馬鹿にしてるのにひどく優しい、低い声。
懐かしさと、愛しさと、切なさが訳もなく溢れ出してくる。
知ってる
この声…
「あなたはだれ?」
あたしが何気なく問いかけると、まるでそれに答えるかのように強い風が吹き、桜吹雪があたしを包んだ。
その中で、あたしはもう一度、さっきの声を聞いた気がした。
「良羽」
優しくあたしの名前を呼ぶ、愛しい声を…
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