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がたん、ごとん、がたん、ごとん
田舎町の片隅で、電車が走り抜けていく。
私は、踏み切りの前に立ち、電車が過ぎ去り、レバーが上がるのを待っていた、ただ、静かにまっていた。
無口だと。
よく言われる、友人から、親から、先輩後輩から、教師から、そして、恋人からも、最後はちょっと悔しい。
人と話すのは苦手じゃない、好きなくらいだ、しかし、話たいことを言葉にすることが苦手だった。
意見も、主張もあるけれど、頭の中で渦巻くだけで言葉にならない、口から出ない。
恋人は、おしゃべりな人、私に対し、一方的に話してくれる、でも、私は頷くだけ、返事をするだけ。
会話じゃない。
「俺ってさ、おしゃべりなんだよね、うぜーって言われること多いけどさ、お前は黙って聞いてくれるから嬉しい、だから好きなったのかもな」と、とびきりの笑顔を振り撒きつつ、恋人は言ってくれた、私も嬉しいけれど、しどろもどろなってあわあわと無言の抗議をしてしまう始末だった、情けない。
おしゃべりなあなたが好きだと言いたかった。
もっと、抑揚よく喋れたら……
もっと、流暢に話すことができたら……
希望は高く、実現は難しい。
「おーい」
どたどたと騒がしく、恋人が追いかけてくる、私は無言ではなく。
「えーっと、んーーっと、あ、う」
しどろもどろになりながら、挙動不審になりながら「遅いぞ、馬鹿者」と、言葉を搾り出す。
私のほうが、馬鹿者だと罵るのだった。
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