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世界は理不尽に溢れていた。
それが俺、柏木 慶(かしわぎ けい)が十八年の人生を終わらせての感想だ。
「……やっと死ねたのか」
何も無い純白の空間で、俺は安堵したように呟いた。
俺は生きてきた世界が嫌いだった。不平等な現実から目を逸らし、平等だと言い続ける社会が嫌いだった。
赤子として生まれた時点で、世界に平等などない。何処の国のどの夫婦の間に生まれたのか、そこで既に格差が生まれている。
生まれ持った才能も平等ではない。天才児は確かに居り、逆に才能に恵まれなかった子供もいる。
「まあ、何だろうと構わないさ」
俺の場合、才能には恵まれていた。勉強も運動も、何の努力も無しに平均以上にいることが出来た。容姿に不満を抱いたことも無い。
だが、育った環境は、恵まれているとは言い難かった。
幼き日から始まった父の暴力。才能に恵まれ過ぎている親と俺を比べる周囲の大人の視線。能力の低い人間からの嫉妬。
そんな環境が、俺の才能を歪ませた。歪んだまま才能は育った。
……とはいえ、もう死んだのだから、そんなことはどうでもいい。全ては今から消えてしまうのだから。
そう思考に結論を付けたところで、純白の空間に俺以外の人型が現れた。
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