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柚奈と暮らし始めて1週間が過ぎたけど、あれ以来洋介はこの部屋に来る事はなく。
毎晩柚奈は茶色いお水をガブガブと飲んでは僕に絡んで来る。
だけど1週間一緒にいて解った事は、柚奈は時々お買い物に出るだけであとはずっとこの部屋にいる事。
たぶん僕が思うには、洋介がお金持ちだから柚奈は洋介から与えられたお金で生活してるんだと思うけど。
誰かと遊びに行くでもなく、ただじっと四角い板の音楽が鳴るのを待ってるだけみたい。
そんなある日の夜、いつものように茶色いお水をガブガブと飲んで、へべれけ状態の柚奈がまた僕に絡み始めた。
「蒼桜ぁー、きょぉはねぇ柚奈のおたんじょーびらのよぉ」
(おたんじょーびって何?)
すっかり僕の特等席になったソファーから片目だけ開けて柚奈の様子を伺って見る。
「柚奈がねぇーこの世に生れた日なんだってぇ。
だけろねぇー、今までだーれにもお祝いなんかしてもらった事ないのぉ」
アハハと一人で笑って柚奈は夕方買い物に行った時に買って来た小さなケーキにロウソクを立てる。
「おたんじょぉびおめれとー私」
ケラケラ笑いながらロウソクの炎を吹き消した柚奈は、今度はうずくまって肩を揺らして泣き出した。
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