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「!!」
黒い生物は赤黒い風をいとも簡単に捻り潰した。
「……一旦距離をおけ」
謙信が静かにそういうと、その場からいち早く離れた。
確かに、この生物の手が二つ空いた今、離れるのが得策だ。
でも、幸村の仇取りに燃えてる信玄がそんなに潔く引くとは思えない。
僕はちらりと信玄の方を見た。
もし信玄が引かなかったその時は僕がーー
「案ずるな、小次郎」
!!
心を読んだかのように僕に言う信玄。
「儂、情に流されて命を落とすような阿呆になった覚え、ないんじゃがな」
信玄は瞳の奥に燃え盛る復讐の炎を隠すと、いつものようにふざけた調子で言うと、すんなりと引いた。
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