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久しぶりにこの町に帰郷した僕は何故か知らないが、五年も前のあの日の夏の出来事を思い出していた。
そういえば彼女は今も元気にしているだろうか。あいにく連絡先などは知っていない。
加えて彼女の名前すら思い出すことが出来ないのは、歯痒い。時間の経過というのは本当に恐ろしいものだ。
目の前にはあの日から何も変わらない急斜面の坂があった。
自然が動作で空を見上げる。
青い空に薄い雲が広がっている。あの日も確かこんな空だった気がした。
「天気雨、降らないよな」
そう呟いて僕は笑う。
まさに、その時、だ。ぽつりぽつりと肩に滴が落ちてきた。
不可解な気持ちも半ば、呆然と空を見上げる。まさかの天気雨。この偶然にはさすがに笑えなかった。
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