壱.

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「ふむふむ、確かにそれは至極真っ当な意見だ。そうだなー、何て説明すれば良いのやら」  言葉を濁して中々理由を話そうとしない会長に、郁が訝しげな表情になる。 「訊き方を変えましょうか。授業には出なくても良いんですか?」 「おいおい、それはこっちの台詞だぜキューティーボーイ。生徒会長として、授業をサボるという行為は感心しないなぁ」 「…えーと、この場合は僕の質問に答えるのが筋かと…」  わかった。この人、馬鹿だ。  恐らく郁はそう考えているだろう。というか俺もそう思う。 「あの」  流石に痺れを切らし、今度は俺が挙手する。いや、良く考えたら挙手する必要など全くないのだが、まぁ流れ的にだ。 「ん?どうしたんだい二枚目美少年」  会長はけろりとした顔で郁からこちらに視線を移した。 「面倒だから本題に移りたいんだが、俺があんたに会いに来た理由を、」 「ストップ。君さ、さっきからあんたあんたってさ、ちょーっと酷くないかなー」  会長の表情が曇る。不味い、しくじった。仮にもこいつ、いや、この人は俺より年上だ(恐らく)。流石にあんた呼ばわりは快く思わないであろう。 「す、すまなかった、えーと、」 「俺にはちゃーんと『六合川 未明』って名前があるんだから」 「くにがわ…?」 「くにがわ、みめい」  変わった名前だな。 「六本木の六に、合意の上での行為でしたの合に、ナイル川の川でくにがわ、未来人の未に明星の明でみめい。よろしくー」  …何だか解りやすいようで解りにくい漢字の例えなんだが。というか、六合川でくにがわなんて読めるのだろうか。 「気になるなら調べてみると良いよ、六合川って読めるから」 「なっ…心を読まれた!?」 「君の思考なんて丸見えさ。俺は何でもお見通しなんだぜ。3キロメートル離れた女子のパンチラも丸見えさ」  成る程突っ込みどころが満載なお方だ。そんなのが有り得るならばマサイ族に匹敵する視力だ。 .
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