壱.

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 俺達の前に突然現れた少年は、小首を傾げ、大きく丸い瞳でこちらを見つめてくる。髪は真っ黒、いや、俺も黒だが、この少年は不自然なくらい真っ黒な髪をしている。そして郁に負けず劣らずな童顔。見たところ、中学生くらいだろうか。この学校の制服(因みにブレザー)ではなく、所謂学ランを着ている。  何も言わずに、否、何も言えずに二人で硬直していると、少年がぽんと掌に拳を置いた。そう、二次元でよく見る、何か理解して納得した時の仕草のような。 「そうか!依頼かい?頼み事ならいつでもウェルカムだよ!さ、入って入って」  …えーと。  こんな少年に生徒会室を占拠されてても良いのか。生徒会長は何をやっている。それとも、こいつが生徒会長だと云うのだろうか。 「まーちん。取りあえず入ってみない?こんなとこで立ち往生してたって始まらない訳だし…この子の正体は置いておいてさ」  そう郁に促され、しぶしぶ少年に導かれるままに生徒会室に入る。 中に入ると、意外と殺風景な景色が広がっていた。何だか生徒指導室のような所だなと見回していると、「まぁ座ってよ」と少年がどこからともなく一人掛けのソファを二つ持ってくる。 .
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